コレステロールは下げない方がいいって本当?

  「コレステロールはあまり下げない方がよい」といった趣旨の情報が、テレビやインターネット、雑誌等でとりあげられる
  ことがあります。コレステロール値が高い方が寿命が長くなる(?)など、健康上のメリットが大きいというものです。
 
  果たして本当なのでしょうか・・・?



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 まずは、「コレステロールは高めの方が長生きである」という主張についてみてみましょう。





 上記の図では、LDLコレステロール値が低い人ほど、年間死亡率が高くなっているように見えます。
 しかし、このデータをそのまま信じていいのでしょうか?

 このデータの対象者には、健康な人の他に、ガンや慢性肝疾患などの重大な疾患が原因で栄養不良状態となり、
 結果としてコレステロールが低くなっている人が含まれます。したがって、見かけ上、コレステロールが低い方が、
 死亡率が高くなってしまうのです。

 コレステロール値が死亡率に与える影響をできるだけ正確に評価したい場合は、同じ背景因子をもつ集団を集めて、
 無作為にコレステロールを高く保つ集団と低く保つ集団に分けて、数年後にどうなるかということを調べる必要が
 あります。こういった研究を、「無作為割付けの前向き研究」といいます。

 前述の調査で、コレステロールが低い方が死亡率が高いように見えるのは、論文に発表されるような信頼のおける
 前向き研究でないことを利用したトリックといえるでしょう。
 
 実際、「コレステロールは高い方がよい」という主張の根拠とされている資料に、前向き研究や信頼のおける学術
 雑誌等に掲載された研究論文等はほとんどなく、これらのデータのみで「コレステロールは高い方がよい」と結論づける
 ことは難しいのではないでしょうか。

 


 このように、メディアなどで誤った情報が取り上げられ独り歩きすることは、無為な混乱を招くことにつながりますし、
 特に、糖尿病や心臓病などのハイリスク患者さんがこういったデータを鵜呑みにしてコレステロールを高いまま放置
 してしまうことは、非常に危険なことです。







 「コレステロールは高めの方が長生きである」といった主張に対して、コレステロールの管理目標値を定める日本動脈
 硬化学会は、「患者さんが治療の機会を逃すことになりかねず危険である」と警鐘を鳴らしています。

 
 同学会は、信頼できる多くの大規模臨床試験に基づいて、「高コレステロール血症に対しては、リスクに応じて積極的な
 食事療法や薬物治療を行うべきである」という方針のガイドラインを打ち出しています。


 その根拠となっている、大規模臨床試験のひとつを見てみましょう。



 プラバスタチンを用いた大規模臨床試験 ; MEGA Study

 MEGA Studyは、厚生労働省の委託研究事業として1993年に開始された特別調査で、冠動脈疾患の既往のない
 軽度〜中等度の高脂血症患者(総コレステロール値220270mg/dl) 約8,000名を対象に、血管系疾患の一次予防
 効果を平均5年以上観察した大規模な無作為化比較試験です。

 対象者を食事療法単独群、食事療法+プラバスタチン(10〜20mg/日)併用群に無作為割付して比較した結果が
 示されています(以下参照)。


 

 食事療法+プラバスタチン(10〜20mg/日)併用群では・・・

 ・ 冠動脈疾患の発症を33%有意に抑制(p=0.010)。また、その中でも心筋梗塞の発症を48%有意に抑制
  (p=
0.03

 ・ 冠動脈疾患や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を30%有意に抑制(p=0.005

 ・ 総死亡を28%抑制(p=0.055

 ・ がんをはじめとした有害事象の発生については両群間に差は認められず、これまでの数々のエビデンスと
  同様、プラバスタチンナトリウムの長期服用の安全性が確認された
MEGA studyThe Lancet, Volume 368, Issue 9552, Pages 2051 - 2052, 9 December 2006より結果を要約


 MEGA Studyの対象者は日本の高脂血症患者のおよそ8割に該当する総コレステロール値220〜270mg/dlの範囲に
 あり、そのうち40%が高血圧を、20%が糖尿病を合併しています。

 また、男女比では女性の比率が高く、わが国の日常診療で一般的にみられる高脂血症患者を反映した集団となって
 います。この集団を対象に、スタチンを用いたコレステロール治療を行った結果、冠動脈疾患に対する強いイベント
 抑制効果を認めたことなどから、臨床的価値の高い研究であるといえるでしょう。



 このように、研究データを見る際には、研究の方法が妥当かどうか(無作為割付、前向き研究であるかどうか、など)、
 しっかり見極める必要があります。





Topics! 糖尿病、心疾患などのハイリスク患者さんでは、より厳格なコレステロール管理が必要!



 糖尿病患者さんへの積極的なLDLコレステロール低下治療で、心血管疾患のリスクが37%低下


 糖尿病患者さんでは、非糖尿病患者さんと比較して動脈硬化のリスクが大きく、日本で行われた久山町研究、  
 NIPPONDATA80
等の大規模臨床研究において、2.62.8倍、冠動脈疾患のリスクが上昇するという結果が示されて
 います。

 2012
年に改定された動脈硬化疾患予防ガイドラインでは、糖尿病患者さんに対するLDLコレステロール管理の重要性
 が強調されており、特に合併症を有している場合、厳格なコレステロールのコントロールが推奨されています。

 
 さてここで、根拠となったデータのひとつを以下にお示しします。
 2004年8月にLancet誌に掲載されたHelen M. Colhoun氏らの論文(抜粋)で、英国とアイルランドの高リスク2型糖尿病
 患者2838例(平均年齢62才)を対象に、プラセボまたはアトルバスタチンを投与し、約4年間追跡した結果を報告して
 います。


 結果は、アトルバスタチン投与群で、主要心血管イベントが37%有意に抑制されました。
 また、項目別には、急性冠疾患イベントの発生が36%、冠動脈血行再建術の実施が31%、脳卒中の発生が48%、
 それぞれ有意に減少しました。総死亡リスクについては、27%抑制されました。


  
 *追跡期間中のアトルバスタチン投与群におけるLDL-C値の中央値は、約77mg/dlでした。

 これらの結果から、この論文の著者であるColhoun氏らは、「リスクを有する糖尿病患者では、スタチンによって
 LDL-C
を積極的に低下させるべきだ」と結論づけています。

 また、糖尿病以外のリスク因子の有無や性、年齢、ベースラインの脂質値の高低などで層別化しても、プラセボ群に
 対するスタチン投与群の心血管イベントリスク比はほぼ同等だったことから、本試験の結果が、合併症のない2
 糖尿病患者にも拡張できる可能性を示唆しています。






 信頼できる多くの大規模臨床研究は、LDLコレステロールをしっかり下げて管理することで、動脈硬化やそれによって
 引き起こされる冠動脈疾患、脳血管疾患等、重大な疾患のリスクが低下することを示しています。

 偏った報道に惑わされずに、食事、運動、薬物療法などをしっかりと継続し、コレステロールを基準値内に
 コントロールすることが大切です。


 *脂質異常症の診断、基準値、検査、治療薬、生活習慣の注意点など・・・ 

詳しくは>>
コレステロールと中性脂肪にどう向き合うか」をご参照ください。


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